小山 志穗 自己紹介へ

後悔しない換気システムの選び方|住宅用換気方式の比較と判断基準

前回、住宅用換気システムには第一種・第二種・第三種という3つのタイプがあると説明しました。今回は、その中でも現実的な選択肢となる「第一種換気」と「第三種換気」に絞り、どちらを選ぶべきか具体的な視点で比較していきます。

■ 初期費用と工事内容の違い

まず大きな違いは、導入コストです。第一種換気は給気・排気の両方を機械で制御するため、本体価格も施工費も高くなります。ダクト配管工事も複雑になりやすく、初期費用は第三種換気の倍以上になることもあります。一方、第三種換気は排気のみ機械で行い、給気は自然に任せる構造。設備がシンプルな分、価格も抑えられます。

■ ランニングコストの考え方

第一種換気はファンが常に2つ稼働し、熱交換器も使うため電気代がかかりますが、外気温との熱ロスが少ない分、冷暖房効率は高くなります。結果的に、トータルの光熱費は抑えられるケースも多いです。第三種換気は電力消費は少ないですが、外気をそのまま室内に取り込むため、冬の暖房や夏の冷房が効きにくくなります。

■ メンテナンスの手間

第一種換気は、空気を通すダクトに加えて、フィルターや熱交換ユニットの定期的な掃除が必要です。2〜3か月に一度のメンテナンスが推奨されます。第三種換気は排気ファンの清掃がメインで、フィルターも少なく、比較的メンテナンスが楽です。機械に弱い方や、手入れに時間をかけたくない方には、第三種のほうが扱いやすいかもしれません。

■ 快適性と空気の質

第一種換気は空気の流れが安定し、温度・湿度のコントロールも効きやすいため、室内の快適性が高くなります。花粉やPM2.5などの対策もフィルター次第で可能です。第三種換気は、外気をそのまま入れるため、外気温や湿度の影響を受けやすく、真冬や真夏の体感温度差が大きくなりがちです。

■ 住宅性能との相性

高気密・高断熱住宅や、ZEH仕様のように省エネ性能を求める家では、第一種換気との相性が良好です。外の空気を直接取り込む第三種換気では、せっかくの断熱性能が無駄になってしまうこともあります。ただし、一般的な戸建て住宅やローコスト住宅では、コストとのバランスから第三種換気が現実的な選択肢となることも少なくありません。

■ どんな家庭にどちらが合うのか?

小さな子どもがいたり、アレルギー体質の家族がいる場合は、第一種換気で空気質を安定させたほうが安心です。寒冷地や都市部で外気の質に不安がある場合も、熱交換器やフィルター付きの第一種が有利です。一方で、コスト重視で選びたい方、機械の管理が苦手な方、温暖な地域に住む方は、第三種換気でも十分対応できます。

【まとめ】

第一種と第三種、どちらが「正解」というわけではありません。重要なのは、自分の家の性能、家族構成、地域の気候、予算や価値観に合ったシステムを選ぶことです。換気は目に見えないインフラだからこそ、住み始めてからの後悔が多い分野でもあります。家づくりの段階で、しっかりと検討しておくことが、快適な暮らしへの第一歩です。

 

 

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